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最高裁判所第二小法廷 昭和58年(あ)1076号 決定 1985年4月09日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人大槻竜馬の上告趣意は、単なる法令違反、事実誤認の主張であって、刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。

所論に照らし職権で判断するに、関税法一一二条の罪は、通関及び徴税に関する秩序の保持を図るため、同法一〇九条一項、一一〇条一項及び一一一条一項の各犯罪を助長しあるいは庇護する行為を処罰しようとするものであるから、右各犯罪に係る貨物は、たとえその情を知らない者により取得されることがあったとしても、なお同法一一二条の罪の客体たる性質を失うものではないと解すべきであって、これと同旨の原判断は正当である。また、関税法一〇九条一項、一一〇条一項及び一一一条一項の各犯罪の犯人に対する公訴時効の完成は、同法一一二条の罪の成立に消長を来すものではない(大審院明治四二年四月一五日判決・刑録一五輯九巻四三五頁参照)。

よって、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 牧 圭次 裁判官 木下忠良 裁判官 鹽野宜慶 裁判官 大橋 進 裁判官 島谷六郎)

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